【コラム】前科・前歴と社会生活

2015-10-15

過去の犯罪歴に関する「前科」「前歴」といった用語が指す範囲は、法律上明確に定義されているものではありません。その経歴が犯罪歴として扱われるかは、場面によって変わってきます。

 

たとえば、刑事裁判で有罪判決を受け禁錮以上の刑(禁錮・懲役・死刑をいいます。罰金・科料は除きます。)を言い渡された場合には、公職選挙法において公職の選挙権が制限されますし(公職選挙法11条1項)、警備業法において警備員の職に就く場合の制限があります(警備業法14条1項3条2号)。

 

これに対して、警察などの捜査機関による捜査の過程では、有罪判決を受けた場合だけでなく、警察に逮捕されたり、書類送検(ニュースなどで耳にしますが、逮捕・勾留されずに、事件を検察官に送致することを指します)されたりするケース、未成年の頃に少年審判を受けたケースを犯罪歴として広く捉えているようです。

 

また、就職やアルバイトをする際の履歴書の「賞罰欄」に過去の犯罪歴の記載を求められることが多く、これを記載しなかった場合には、経歴詐称として懲戒事由に当たる可能性があります。

 

ただし、実際に、経歴詐称として就業先から懲戒されるかは、詐称の内容や職種などに即して具体的に判断するとするのが判例(最判平成3年9月19日)です。裁判例の中には、少年時代の非行歴を履歴書に記載せず就業先に告知しないまま採用され、その後、非行歴を秘匿していたことを理由の一つとして解雇されたケースで、少年法の目的などを加味し履歴書の賞罰欄に少年時代の非行歴まで記載すべき義務があるとはいえないとされたものもあります(福地判昭和49年8月15日)。

 

なお、自動車の駐車禁止区画に駐車した場合(いわゆる「駐車違反」)などの道路交通法違反で警察官から告知(いわゆる青切符)を受け反則金を支払っても、それは「過料」(行政罰)であって、「罰金」(刑罰)ではなく犯罪歴にはなりません。

 

一口に「犯罪歴」といっても、場面によって含まれる内容は異なります。上記のように、禁錮以上の刑を言い渡された場合にのみ制限があるのに、「罰金」刑であっても制限があると誤解している場合や、自分では「罰金」(刑罰)だと思っていても、単なる「過料」(行政罰)で犯罪歴とはならない場合もあります。

 

気になることがあったら一人で抱え込まず、専門家である弁護士に相談することをおすすめします。

 

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