【コラム】包丁を持ち歩くと銃刀法違反?

2015-05-28

包丁を持ち歩くと犯罪になると聞きました。毎日の料理に欠かせないものなのに、犯罪になるなんてイメージが沸きません。

先日、娘が一人暮らしを始めるのでキッチン用品を揃えてあげようと近所のホームセンターで包丁を買ってきました。ホームセンターから自宅まで、しっかり梱包されたままの包丁を買い物袋に入れて持ち帰ってきたのですが、私は犯罪になるのでしょうか。

また、最近夜間のバイトを始めた息子が、護身用と言って、この包丁を、梱包もせずそのまま鞄の外ポケットに入れて持ち歩いているようです。息子は犯罪になるのでしょうか。

 

-銃刀法-

まず、銃砲刀剣類所持等取締法(「銃刀法」)では、「業務その他の正当な理由なく、刃体の長さが六センチメートルをこえる刃物の携帯」を禁止しています(同法22条)。これに違反すると「二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金」が科される可能性があります。

ここにいう「携帯」とは、「自宅または居室以外の場所で直接手に持ちまたは身体に帯びるなど、直ちにこれを使用しうる状態で身辺に置くこと」をいいます。

業務とは、その人の「社会生活上の地位に基づいて反復継続して行う行為」をいいます。たとえば、板前さんが仕事で使う包丁を持って、自宅と調理場の間を行き来する場合などがこれに当たります。

その他の正当な理由とは、社会通念上相当と認められる場合をいいます。たとえば、今回のように、包丁を買って自宅に帰るまでの間、持ち歩いた場合などがこれに当たります。

 

今回のケースを考えてみましょう。

今回の包丁が、刃体の長さが六センチメートルをこえるものであれば銃刀法の取り締まり対象になります。

しかし、質問者の方は、娘さんが料理に使うために新しい包丁を購入し、それを店から自宅まで持ち帰ってきただけです。このようなケースは、通常、包丁を持ち歩くことに正当な理由があると判断されます。また、包丁は、しっかり梱包されたままだったとのことですので、「直ちにこれを使用しうる状態」ともいえず「携帯」にも当たりません。これらの点から、銃刀法違反に問われる可能性は低いと思います。

 

他方で、質問者の息子さんは、護身用として包丁を持ち歩いています。正当な理由があると判断される可能性は低いでしょう。なぜならば、銃刀法は、刃物などによる危害を防止するために設けられた規制です。護身用ということは、場合によっては、人に危害を発生させる可能性も否定できないため、正当な理由があるとは認められにくいと考えます(護身用に包丁を持ち歩くことが正当な理由にならないとした裁判例として、東京地判平成8年3月12日判時1599号149頁、があります)。また、梱包などせずそのまま鞄の外ポケットに入れているとのことですので「直ちに使用できる状態」と評価され「携帯」したと認められます。したがって、息子さんの場合には、銃刀法違反が成立する可能性が高いと思われます。

 

-軽犯罪法-

次に、刃体の長さが六センチメートルをこえない場合には、軽犯罪法1条2項に定められている「正当な理由がなくて刃物を隠して携帯していた」場合にあたるかが問題になります。軽犯罪法違反には、「拘留または科料」が予定されています。

質問者の方の場合には、銃刀法の場合と同様に「正当な理由」があり、「携帯」にも当たらないと判断される可能性が高く、軽犯罪法違反に問われる可能性は低いでしょう。

 

質問者の息子さんの場合ですが、こちらも銃刀法の場合と同様に、「正当な理由」があると判断される可能性は低く、「携帯」したと認められる可能性も高いでしょう。また、鞄の外ポケットに入れて人目につかない状態にしていたのであれば、「隠して」携帯していたと評価される可能性が高いです。したがって、息子さんの場合には、軽犯罪法違反に該当する可能性が高いでしょう。

 

もちろん、犯罪に当たることと、検挙されることは別です。しかし、社会生活を送る上では、様々な規制がかかってきます。知らなかった、で済まされないことがあります。自分の行動が規制に違反するのではないかと不安に思ったら、弁護士などの専門家に相談してみてください。違反していないのに不安に思って生活するのは勿体ないですし、違反していたのであればすぐに対処することが必要です。

 

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