【コラム】子どものいたずらと少年犯罪

2015-07-01

中学生3年生のA君は、一万円札とよく似た色やデザインであるものの、「百万円札」と書かれたおもちゃのお札を使って、コンビニで100円のお菓子を買い、9900円のお釣りをもらいました。A君が「店員に、おもちゃのお札だとバレるだろうけど、とりあえず使ってみよう」と思い、試しにレジで差し出してみたら、店員さんは、一万円札だと思って商品とお釣りをくれたのです。

後から、おもちゃのお札だと気付いた店員さんが警察に通報し、A君は、警察から事情を聞かれる事態になってしまいました。

 

偽札を使った事件は、度々ニュースなどでも報道されています。過去には、本件のように、おもちゃの「百万円」札を使って両替えをした事件もあったようです。

偽造された日本国内で通用する通貨等(貨幣、紙幣、銀行券(日本銀行発行の千円札・五千円札・一万円札などのこと))を、お店などで使った場合には、「偽造通貨行使等罪」(刑法148条2項)に問われる可能性があります。偽造とは、一般の人が本物と誤認する程度に、通貨に似た外観のものを作成することをいいます。

偽造通貨行使等罪の法定刑は「無期又は3年以上の懲役」と、大変重いものとなっています。

この法定刑の重さは、通貨への信用が社会にとって非常に重要であることを表しています。世の中で使われている通貨等は本物であるという信用があるからこそ、お店で欲しい物を売ってもらえたり、レストランで美味しいものが食べることができたり、お年玉を貰ったら嬉しいのです。

 

では、今回のケースはどうでしょうか。

今回は、一万円札に似たお札をコンビニで差し出して買い物をしていますので、偽造通貨行使等罪が成立するおそれがあります。
しかし、お札には、「百万円」とはっきり書いてあります。現在の日本に「百万円」札と書かれた紙幣や銀行券は存在しませんので、一般の人が本物の一万円札だと誤認するとは限りません。つまり、偽造された通貨等といえない可能性があります。

また、現在の日本では「百万円」札という紙幣や銀行券は、発行されていませんので、日本国内で通用する通貨等ともいえない可能性があります。
もし、このように「偽造された」「通貨等」でないと評価できるものであれば、偽造通貨行使等罪は成立しません。

 

次に、仮に偽造通貨行使等罪が成立しなかったとしても、他に、何か犯罪は成立するのでしょうか。

この場合には、詐欺罪(刑法246条1項)に当たる可能性があります。詐欺罪の法定刑は「10年以下1ヵ月以上の懲役」になります。偽造通貨行使等罪に比べると、懲役の上限が無期から10年に、下限が3年から1ヵ月になりますので、刑が大きく軽くなります。

 

今回のケースを見てみましょう。

詐欺罪の場合、相手を欺く行為が必要になります。欺く行為は、簡単にいうと、真実ではないことを真実であるかのように装って、相手に真実であるかのように勘違いさせようとする行為です。

たしかにA君は、店員さんに「百万円」札を渡し、100円のお菓子と9900円のお釣りを受け取りました。しかし、「百万円」札を一万円札であるかのように装っていたのかは、「百万円」札の渡し方などの状況によります。A君が、「百万円」と書いてある部分がよく見えるように渡したのか、それとも、一見すると一万円札に見えるように折り曲げて渡したのか、など細かい事情から、欺く行為に当たるかどうかが判断され、詐欺罪といえるかどうかが決まります。

 

この他にも、おもちゃのお札を渡したことによって、コンビニの営業などに支障が出た場合には、偽計業務妨害罪(刑法233条)などに問われるおそれがあります。

 

このように、中学生のA君にとっては遊び半分でしてしまった行為であっても、立派な犯罪が成立します。同じような事例で警察が「逮捕」したケースもあります。

未成年者が逮捕されると、成人と同じように警察の留置施設で身体拘束され、刑事から取調べを受けます。逮捕後、検察官の請求によってなされる「勾留」という10日間(最大20日間)の身体拘束は、少年法では「例外」とされていますが、実際の運用では「捜査の必要がある」ということで、多くのケースで勾留がなされ、成人と同じように身体拘束が続き、刑事や検事の取調べを受けることになります。そして、いったん逮捕されると、(それが成人であれば裁判にかけられなかったり、罰金で済むような)比較的軽微な事件であっても、必ず家庭裁判所に送られ、少年鑑別所に入ることになったり、少年審判を受けることになります。

万が一、A君のように、ちょっとした遊び心で犯罪を犯してしまったときには、すぐに少年事件に詳しい弁護士に相談し、被害店舗に対する被害弁償や謝罪を進めるなどして、逮捕されないように最善を尽くすべきです。また、逮捕されてしまった場合は、弁護士は、弁護人・付添人として、ご家族と協力し、少しでも身体拘束の期間を短くしたり、家庭裁判所で受ける処分が軽くなるよう様々な活動をすることになります。

 

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