【コラム】法律の改正と適用法令

2015-10-29

法律は、社会の動きとともに新たに制定されたり、改正されたりします。

たとえば、悪質な運転による交通事故の多発をきっかけに、飲酒や薬物の影響による危険な運転等を規制する声が高まり、危険な運転等を重く罰する法律である自動車運転死傷行為等処罰法(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律)が制定され、2014年5月に施行されました。

また、ダンスホールの営業時間などを規制していた風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)は、規制を設けた当時のダンスホールと現在の「クラブ」などとでは、営業の態様が異なるものもあり、店内の明るさなどによって適用対象となる店を分類するなどの改正風営法が今年6月に成立し、近く施行される見込みです。

 

このように新たな法律が制定されたり、法律が改正されることはよくあることです。

そして、自動車運転死傷行為等処罰法も風営法もいずれも罰則を含む法律であり、当該法律に違反すると犯罪になります。

ところで、これらに限らず刑罰法規に違反した犯罪行為があり、行為から裁判までの間に法律が新たに制定されたり、改正された場合には、いかなる法律が適用されるのでしょうか。

 

この点、刑罰法規の適用は、裁判の時に有効な法律ではなく、行為の時に有効であった法律を適用する、というのが原則です。

まず、行為の時に法律が有効でないということは、行為時には当該法律が自分に適用されるかわからないということです。それにもかかわらず後に当該法律を適用されるとなると、誰もが後の法律の制定や変更を怖れて身動きがとれなくなり、不当に過大な制約を受ける結果になります。このことは、行為の時に犯罪とされていなかったにもかかわらず、後に当該行為を犯罪とする法律ができた場合を考えるとよくわかります。つまり、行為の時は犯罪ではないとされていたため、当該行為を行ったにもかかわらず、後に、「当該行為は犯罪とされました」、として処罰されるのは不当ということです。

したがって、原則として、裁判時の法律を行為時に遡って適用することはありません。これを「遡及処罰禁止の原則」と言い、非常に重要な原則です。

しかし、例外として、行為後の法律改正により、刑の重さに変化があり、行為時よりも軽くなった場合には、行為者に有利な方向に考え、裁判時の法律を適用します。つまり、行為時の罰則より裁判時の罰則の方が刑が軽い場合には、裁判時の刑を適用し、逆に行為時の罰則の方が刑が軽い場合には、遡及処罰禁止の原則通り、行為時の刑を適用するのです。行為の時点の罰則と裁判の時点の罰則とを比べ、刑が軽い方の法律を適用するということです(刑法6条)。これは、法律を遡及的に適用することが行為者に有利である場合に認められる例外と言えます。

 
ただし、法律の改正により刑の変更があった場合でも、改正法の中に「この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による」とか「この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、旧法は、この法律の施行後も、なおその効力を有する」などという条項が設けられている場合があります。この場合には、裁判の時点で法改正により刑が軽くなっていたとしても、従前の刑、つまり重い方の刑が適用されるので注意が必要です。

 

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