【コラム】痴漢と東京都迷惑防止条例

2014-09-10

電車内等で見ず知らずの相手の体を(性的な意図をもって)触ることを、日常用語では「痴漢」といいます。

しかし、法律上「痴漢罪」というものはありません。痴漢で逮捕されるときに適用される法律は、通常は以下の2つのどちらかです。

1.東京都迷惑防止条例(正式名称:公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する法律)

第5条 (粗暴行為(ぐれん隊行為等)の禁止)
何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない。

 ① 公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れること。

2.刑法 

第176条(強制わいせつ)
13歳以上の男女に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の男女に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

 

両者の一番大きな違いは、法定刑(法律で定められた刑の範囲のこと。裁判ではこの刑の範囲内で具体的な刑が言い渡される。)です。

1の迷惑防止条例違反の法定刑は「1か月以上6か月以下の懲役または50万円以下の罰金」ですが、2の刑法が適用されると、法定刑が「6か月以上10年以下の懲役」に跳ね上がります。

一般には、相手の身体を服の上から触ったときが1、直接触ったときが2になる、などと言われることがありますが、この基準はあくまでも目安に過ぎません(服の上から触ったときでも2が適用されることもありますし、直接触っても1が適用されることもあります。)。

本当はやっていないにもかかわらず逮捕されてしまった、そんなときは徹底的に争う姿勢が大切でしょう。

 

これに対し、本当に痴漢をしてしまったのであれば、相手の方に素直に謝るのが一番です。

まずは相手の方と連絡を取り、誠実な態度で話し合いをすることで、被害届を取り下げてくれることもよくあります。

相手方と示談がまとまり、相手方が被害届を取り下げてくれたときは、多くの場合「不起訴処分」になります。

 

それでは、「痴漢事件」では示談金としてどのくらい準備すべきなのでしょうか。

ネット上では、「痴漢の場合の示談金の相場は20万円から30万円程度」なんていう情報が書かれていることもありますが、これはあくまで目安です。被疑者の方に資力がなければ(現実問題として)もっと低い金額しか提示できないでしょうし、被害者の方が「いくらもらっても絶対に許せない!」と考えているのであれば示談を強制するわけにもいきません。

このように、一つの明確な基準によってスパッと割り切れないところが、示談交渉の難しいところでもあり、かつやりがいを感じる部分でもあります。

当初の話合いでは「犯人を絶対に許さない!」と話していた方が、何度も面談を重ねるうちに少しずつ弁護人に対して気を許してくれ、最終的に円満に示談に応じてくれることもあります。

被害者の方とどれだけ誠実に向き合うことができるのかが、示談をする際に一番重要であるといえるでしょう。

 

 

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