【コラム】相手に土下座させることは犯罪か?

2015-05-14

1 相手に土下座をさせることは犯罪になりうる

昨今、市役所職員や、コンビニエンスストアの店員の対応が悪いことに腹を立て、土下座をさせたことで、土下座をさせた側が逮捕されたという事件を耳にすることがあります。特に、SNSの発展に伴い、土下座をさせた側が面白半分にインターネット上にこれを公開して発覚するケースが多いのではないかと思います。

相手の落ち度に対し、謝らせて何が悪い、と思う方もいるかもしれません。しかし、相手に土下座を求めることは、これからお話しするように強要罪にあたる可能性があるため、冷静になる必要があります。

 

2 強要罪とは

強要罪は、刑法223条に規定されている罪です。

1、生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、3年以下の懲役に処する。
2、親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者も、前項と同様とする。
3、前2項の罪の未遂は、罰する。

「人に義務のないことを行わせ」とあります。対応が悪い店員は謝るのが義務だろうと思われるかもしれません。しかし、ここでいう義務とは、基本的には法律上の義務ということになりますので、道徳上するべきだというだけでは、義務があることとはいえません。

 

3 ボーダーラインは

強要罪というためには、義務のない行為をさせるために、「脅迫または暴行」を用いることが必要となります。

法律上、脅迫または暴行をせずに、単に「土下座をして謝って欲しい」と普通に言っただけでは、本罪は成立しません。淡々と謝罪を求め、その結果として相手が謝罪をしたとしても、何ら罪にはなりません。

ここでの「脅迫」は、条文に書いてあるとおり、親族または本人の生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知することがこれにあたります。

「暴行」について、どの程度の行為が暴行に当たるかは、かなり広く考えられており、相手の自由な意思決定を妨げる程度と考えられています。したがって、直接相手に向けられた暴行でなくても、義務がないことをさせるために、相手の近くで大きな音を立てたり、物を破壊したりしたとしても本罪に当てはまる可能性は十分にあります。

 

4 土下座をさせた場合に犯罪となるケース

冒頭にあげました、土下座をさせたという場合ですと、どのような過程を経て土下座という義務のない行為をさせるに至ったかという点が問題になります。

土下座させる前に、相手を小突いたり、店のカウンターをガンガン叩いたりすれば、それは暴行にあたりますし、「お店を潰すぞ」などといえば、相手の財産への害を加える旨を伝えることになりますから、脅迫にあたります。一方で、こういった暴行脅迫を伴わずに土下座を求めただけであれば、強要罪にはあたりません。

もっとも、店舗などに居座ったり大きな声を出し続ければ、不退去罪(刑法130条)や威力業務妨害罪(刑法234条)が成立する可能性もあります。また、仮に犯罪にあたらなくても、土下座を求めるということ自体、行き過ぎだとして世間の批判を浴びるおそれもあります。現代社会において、土下座を求めることは基本的には避けたほうが賢明だといえます。

 

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