【コラム】窃盗と量刑の目安

2015-03-26

1 犯罪の多くは窃盗罪である

窃盗罪は非常に件数の多い犯罪類型です。

平成26年の犯罪統計によれば,犯罪認知件数の総数(既遂・未遂あわせて)が,121万2163件であるのに対し,窃盗罪の認知件数は89万7259件と,実に74パーセント以上を窃盗罪が占めています。

 

2 窃盗罪の特徴

そのため,窃盗罪については、他の事件類型と比較しても多くの裁判例が集積されており,これまでに類似の事件があれば,おおよその量刑を想像することができます。

また,万引き程度の比較的軽い犯罪から,最新の機器を駆使して組織的かつ大規模に行う自動車窃盗,他人の住居に侵入して窃盗を行う侵入盗など,一口に窃盗罪と言っても様々な態様があることも特徴です。

そのなかでも、今回は、万引きについての量刑相場についてお話します。

 

3 万引きの量刑の目安

万引きは,多くの場合,1件1件の被害額はそれほど大きくありません。ここでは,そのことを前提に話を進めます。

万引きで捕まり、警察に通報されてしまったあとに想定される典型的な処分としては、

・警察での注意で終わる(微罪処分)
・検察での注意で終わる(不起訴処分)
・裁判所による罰金判決
・裁判所による執行猶予付きの懲役刑判決
・裁判所による執行猶予のない懲役刑判決(実刑判決)

があります。下に行くほど法律的には重い処分になります。

どういった処分がなされるかは、これまでに捕まった回数、被害額、被害者の感情、示談ができているか否か、執行猶予中か否かといった要素を、これまでの同種事件と比較することで判断されます。

初めて万引きで捕まったときは、警察での注意(微罪処分)、もしくは検察での注意(不起訴処分)で終わる場合が少なくありません。ただし、被害者への示談もできておらず、被害者の被害感情が非常に悪い場合、軽微な処分で終わらないこともあります。弁護人がつくことで、被害者との示談交渉をすることは、何度目の窃盗かを問わず必要なことです。

そこから2度目、3度目と捕まる回数が増えていくと、警察・検察の対応もそれにあわせて厳しくなってきます。

罰金刑は、1度目であれば20万円から30万円の範囲になることが多いです。

罰金刑の場合、罰金が支払えない場合は、労役場留置となり、一定期間刑務所内にある労役場での作業を行うこととなります。1日5000円換算になることが多いので、2,3ヶ月の間ではありますが、懲役刑と実質的には同じ生活をしなくてはなりません。

懲役刑の場合は、刑法上は10年以下の懲役となっていますが、最初は1年に満たない程度の場合が多いです。

しかし、回数を重ねるうちに、万引きのような少額の犯罪であっても、2年近い懲役刑が課されることもありますし、執行猶予期間中に再度捕まってしまった場合は、前刑との合計になりますので、相当長期の刑に服することとなります。

 

4 弁護士のかかわり

いずれの場合であっても、示談の成否は量刑に大きな影響を及ぼします。

特に、早期に事件から解放されることを目指すのであれば、示談獲得は必須といえるでしょう。弁護人を依頼する最大のメリットは、この示談獲得にあります。これに加えて、弁護人は、二度と再犯を行わないような生活環境が整っていることを示すために、親族による身元を引受け・監護をする旨の誓約書の作成を検討したり、雇用先に雇用を続けてもらうことを約束してもらったり、就労先を確保したりします。

また、反省していることを示すために謝罪文・反省文の作成や贖罪寄付(贖罪の意思を示すために、公益団体などに寄付をすること)を促したりもします。さらに、下記にあるような医師による診断を始めとする、専門機関との連携による本人の治療・回復を目指すことも弁護人の活動の重要な一つです。

 このように、弁護人は様々な手段・手法を用いて、本人にとって最善となるよう弁護していきます。

 

5 クレプトマニアが疑われる場合

また、社会的な認知度は低いですが、クレプトマニア(kleptomania・窃盗症)という病があります。

クレプトマニアの典型的症状は、その物を使うつもりも何もないのに、ただ単に物を盗みたいという衝動を抑えられなくなって盗みを繰り返すというものです。所有欲や、経済的欲求からでは、説明が容易につかないような物を盗む点が一般的な万引きと異なる特徴です。これは精神疾患として認められたれっきとした病であり、刑を科せば治癒するというものではありません。専門家によるしっかりとしたケアが望まれるものです。

弁護人に依頼すれば、治療先を探し、裁判所にその旨を示すことで減刑を目指すことも可能です。実際に、クレプトマニアと診断された方に対して執行猶予を認めた裁判例があります。

 

ページの上部へ戻る

Copyright(c) 2014 早稲田リーガルコモンズ法律事務所 All Rights Reserved.