【コラム】TPPと知的財産権

2016-02-18

1 TPPと知的財産権

TPPは、貿易の自由化を推進するために、国内市場を閉鎖的にする規制の撤廃や貿易の自由化を推進するための措置を加盟国に要求します。

そのため、TPPの締結による国内産業への影響が危惧されています。特に、農業や医療分野への影響がよく報道等で取り上げられていますが、知的財産分野にも「著作権侵害の非親告罪化」や「著作権保護期間の大幅延長」等、大きな影響が生じることが指摘されています。

その中でも、「著作権侵害の非親告罪化」は、特に重要な論点です。今回はこの点についてご説明します。

2 「著作権侵害の非親告罪化」

親告罪とは、被害者等からの告訴がなければ検察官が起訴することができない犯罪のことをいいます。親告罪が告訴なしに起訴された場合、その訴訟は、訴訟条件を欠くため、公訴棄却の判決により具体的な審理に入ることなく訴訟が打ち切りになります。

このような親告罪が認められている根拠はさまざまであり、犯罪の性質上、被害者の名誉を尊重する趣旨である場合(名誉棄損罪、強姦罪等)や軽微な犯罪である等の理由で訴追するかどうかを被害者の意思で決定しようとする場合(器物損壊罪等)があります。

著作権侵害の場合、大規模な海賊版の領布から論文の剽窃行為まで侵害の態様は多様で、中には表現物として著作権者が容認している場合もあります。

このように、著作物については表現の自由に関わる問題であることも踏まえ、著作権者に処罰の要否の判断を委ねるべきとの要請があります。また、著作物が著作者の全人格が反映されていること(「著作者人格権」といいます)からすると、訴追によって事実関係が明るみになることによって、かえって著作権者の権利を害することもあるとも考えられてきました。

そのため、これまでは、被害者が処罰を希望していないときにまで国家権力が処罰を行うことは妥当でないと考えられてきました。

一方で、ご存知のとおり、海外で製作された海賊版のDVD等が広く溢れています。このような状況の中で、著作権者が告訴しない限り、著作権侵害を取り締まることができないというのは、著作権保護強化の観点から不十分です。

そこで、被害者の告訴がなくても、検察官が自由に訴追できるようにすることで著作権の保護を手厚くしようと、著作権侵害の非親告罪化が主張されています。

しかしながら、このような非親告罪化の主張に対しては、実際には、著作権侵害の非親告罪化は著作権の保護の強化に効果的でなく、また、同人誌の製作等の二次創作活動への委縮効果や捜査機関による著作権侵害の恣意的運用のおそれがあると強い批判が加えられています。

他方で、一部悪質な事例についてのみ非親告罪化を進めるべきではないかという議論もあります。日本弁護士連合会も、平成19年2月に著作権事件の非親告罪化に反対する声明を出しています。

3 最後に

著作権侵害の非親告罪化により、思いがけないところに著作権侵害として処罰されるリスクが生じるかもしれません。たとえば、これまで処罰の対象にならなかったパロディーや、動画をウェブにアップロードする行為も、著作権者の告訴なく処罰の対象となる危険があります。

万が一、あなたやあなたの大切な方が著作権侵害により処罰されてしまいそうになった場合、速やかに弁護士にご相談下さい。弁護士は、著作権侵害の有無について見通しを立て、不当な処罰がなされないように断固として戦います。

 

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